『i-mode』の生みの親、夏野さんのお話まとめ@イノベーショントークライブ

■講演タイトル
 「この時代に求められるリーダー像」


■講演者
 夏野剛さん:『i-mode』の生みの親、ドワンゴGREE他数社の取締役


■講演内容


□前段の話
・今日の趣旨は、IT革命後の現在の世界を少しひいて見てみましょう、というもの。


・「IT革命」が流行語になったのは、10年前


・みんなが当たり前だと思っていることが、10年前は当り前じゃなかった。
 それを今、思いなおしてみるのも重要なんじゃないか。


・20年前は一人1台PCがなかった。ありえない。
 ワープロ専用機で編集してた世界。


・仕事の進め方そのものがこの10年間で大転換している。
 PCも携帯もない。携帯でメールできない。




□IT革命について
・IT革命は1990年代後半から始まった。アメリカでは1994年〜。94年12月に米Yahoo!始まる。
 94年までネットはオタクのものだった。
 コンピュータ技術と情報通信技術がキードライバ。
 IT革命により、人間の行動パターン、ライフスタイルに劇的な変化が起きた
 はずなのに・・・?


・IT革命によって何が起きた?
 L技術のコモディティ化が起きた
  技術は市場で入手可能
  技術を使ってどのような付加価値を生み出すか=ビジネスモデル構想力が必要
 L情報流通スピードの「超」高速化
  コントロール不能
 Lすべてが「流通」する時代へ
  どこに必要なものがあるかが簡単に発見できす
  (モノ、カネ、技術、人材、会社)
  オークションの一般化


・IT革命がもたらす変化
 L情報の「非対称性」を前提とした仕組みはもういらない
  供給側と需要側で持っている情報が違うことを非対称性という。
  要は、情報が行き渡ってないことを前提としたビジネスは成り立たない。
  例えば、記者クラブ。例えば、多段階役職制度(特に中間管理職)。
  例えば、間接選挙
 Lユーザーのオペレーター化がどんどん促進される
  国内航空券の70%がネット経由で買われる。
  例えば、旅行代理店はもういらない。
  オペレーターがやっていたことをユーザーがやってくれる。発想の大転換
  例えば、証券会社の支店窓口、本屋・レコード屋、図書館、地域物産展。
  中間に存在するものは、それ自身が価値を生み出さなければならない。
  価値を生み出せれば、引き続き存在価値がある。
  ⇒物は使いよう。組み合わせの仕方で生き残れる。いくらでもある。
 L経営者の役割の変化
  一昔前の経営者、管理職の重要な役割は「管理、監督」
  今は、ヒエラルキーに基づく情報収集による管理、監督ではなく
  方向性を指し示すこと。


・IT革命は未だ道半ば
 Lこの10年で社会は大きく変わったように見えるが、まだ道半ば
  Eコマース売上vs民間最終消費支出(GNP)
  ネット広告費vs広告費全体
 Lこれからがむしろ本番
  若い人には当たり前のことが、中高齢者には複雑でわからない、という状態



□IT時代に求められるリーダー像
・方向性を示すこと
 今まで「情報を精査し、議論を尽くす」そのための仲裁者、調停者がリーダー
 これから「ある一定以上の調査のあとは、進むべき方向を指し示すこと。」
 なぜなら、今は情報過多。いい情報も悪い情報も即座にたくさん集まる。
 議論の積み上げでは結論がでない。


・ディテールを知る
 情報が簡単に手に入るということは、
 相手のこともよく知れるし、
 こちらのことも相手はよくわかっている状況。
 情報をおさえないと話ができない。


・哲学、信念を持つ
 今まで「リーダーは誰がやっても同じ」
 これから「組織の社会的ミッションは何?競争優位は何?最終的に何を目指す?
      を自分なりに持った上で経営判断を行うことが必要。」
 自分はこう思う、が重要。間違っていてもいい。
 人と意見が違っていてもいい。


・昨日と同じことを疑う
 今まで「予定調和の計画。ロードマップ好き」
 これから「組織は何も言わないと、変化しない。
      変化しないと、周辺が変化するので、退化する。
      常に変化をリードすること。」


□今日伝えたかったこと
・フレキシビリティと
 ポケットをたくさんもって、大きな視点で物事を見ること


・ひいて考えると、当然のことが起こっている。
 意志とか哲学を持ってる人のほうが、魅力的。


・今日の話は物を考えて、仕事をしている人にとってはいい話。



□質疑
リクルートの社会的ミッションは?
 →経歴のトラッキング、ベストマッチングのシステム的創出
  強いところをイノベーションしてみたら?他のところじゃなくて。
  リクルートはいろんな人材を輩出してるが、役員は全員リクルート
  これっておかしくない?人材流通は双方向であるべきだ


・新しいことをやるときに利益率は出ない。どれくらい我慢したらいい?
 →信念をどう思っているか。
  ネット事業は、規模。規模が獲得されれば利益率が出る。
  短期的に環境が変わるから、利益の確保なんてできない。
  タイムフレームと規模を事前にセットしておくこと。
  3年で立ち上がらないとだめ。始めて1年で感覚はつかめる。
  初速以上にビジネスはならない。
  利益率を気にする経営者は騙せばいい。
  手じまいを早くする。
  BtoCはユーザー数。有料課金は割合。
  SNS、プラットフォームは1000万人いくかいかないか。


ソーシャルメディアは変化?どう捉えてる?
 →Twitterはおもしろい。
  人間才能発見システムだと思ってる。
  人間同士上下関係はない。才能のポートフォリオが違うだけ。
  専門家が自然発生的に起きるのは素晴らしい。
  そのためには実名であるべき。実名の面白さはある。


・サービス開発の秘訣
 →ヒントは身近にあり
  こんなことができたらいいのに、なんでここまでできてないんだろう、
  という素朴な疑問を解決するだけでも大変な付加価値に創造になる
  「こんなことできたらいいのに。」を考えるだけ。
  高尚な問題解決を話していてもしょうがない。
  だって、相手はコンシューマーじゃない。難しいことは通じないよ。
 →フツーに考える
  技術、制度、社風、経営陣の理解力(4大障害)など、今抱えている「限界」をまず忘れて
  フツーに考えたらこうあるべきだ、を整理し、その上でどこまで出来るかを考える
  会社の限界を前提に組みあげちゃダメ。
  リソースが足りないなら、外から採用すればいいじゃない。
 →勝てるケンカをする
  自分が確信できる(主観)、理屈にかなっている(客観)、会社(社会)のためになる(目標)の
  3条件にかなっているときは、徹底的に抵抗勢力とケンカする。トコトン喧嘩する。
  狂犬であれ。信念もってやってるなら、最終的には会社のためになるんだから。
 →魂を込める
  個人の信念、魂、意志をどれだけ込められているかで商品力は変わる。芸術と同じ。
  熱意は必須条件。建築家に学んだこと。
 →自分は何が変なのかを理解しておく
  まったく平均的な人間はいない。自分の思考、嗜好、志向のクセを理解しておく。
  理解した上で、組織と上手に付き合ってく。